ニュース<2011年>

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ニュース<2011年>

耐震性は完璧! 建物調査の結果がまとまる

検見川送信所建物近景

平成22年度の千葉市予算により、検見川送信所建物の保存可否を探るための現状調査が本年3月までに行われました。その結果、建築後80年の経年劣化は認められるものの、耐震性については「倒壊・崩壊の危険性は低い」ことが判明し、改めて設計と施工が強固であったことが証明されました。

以下、今回の調査について千葉市教育委員会文化財保護室が公表した内容を以下のとおり掲載します。

経過

平成22年11月11日
入札、(株)千都建築設計事務所に決定
平成22年11月15日
契約締結
平成22年12月2日
関係者事前打合せ(於:検見川稲毛土地区画整理事務所)
平成22年12月9日
調査開始
平成22年12月17日
監修の先生方現地視察
平成22年12月20日
地元自治会関係者内部視察

調査行程

平成22年12月13日
仮設出入口設置
平成22年12月17、20~22、24、27~28日
草刈り、整地作業
 
 
平成23年1月12~14、20~21、24~25日
実測、仕上調査
 
平成23年1月11~14日
外壁劣化調査
 
平成22年12月21日、平成23年1月25日
構造寸法、部材断面調査、目視調査、配筋探査、はつり出し調査

平成23年1月25~28日
コンクリート調査(圧縮、中性化)

調査結果

1.外壁の劣化について

目視及びテストハンマー等により確認し図面に記録した。外壁は、仕上げはモルタルの上にみかげ砕石洗い出し仕上げとなっており、東西南北すべての面に仕上げ材の浮きが広範囲に生じていた。なかでも、南面や西面で顕著であった。南面は、浮きのほかに鉄筋腐食によるコンクリートの露出、剥落箇所も多数生じており、鉄筋の断面欠損も確認された。

屋上階では、防水の抑えにコンクリート平板を用いているが、平板の上に植物が生育し、その根が平板下部まで伸張し、平板が浮き上がっている場所も確認された。現状調査からは雨が漏れている場所は確認できなかったが、屋上の状態から、防水層がかなり劣化していた。

2.内部の劣化について

建物を使用しなくなって後、土砂や塵埃が積もっている。建具や窓回りの損傷が著しい。床や間仕切り壁などから何度か模様替えを行った様子がうかがえた。

柱や梁、天井の仕上げは、塗装がはがれているが、それほど劣化はしていないと思われる。モルタルの上に漆喰を塗り仕上げた柱・壁・梁と天井の取り合いやR加工などの面取り加工は美しいが、窓回り、換気口回りなど外から水が侵入しやすい場所は、モルタルの剥落が著しいところもあった。

3.建物の耐震性について

耐震判断基準に基づき、外壁の劣化、外壁・内壁のひび割れ調査、柱壁の断面寸法測定、床レベル測定、柱の傾斜測定、コンクリートの強度・中性化試験、柱・壁の鉄筋の径、錆び、RCレーダーによる柱壁の鉄筋の確認を行い、そのデータをもとに耐震診断を行った。

その結果、「地震に震動及び衝撃に対して倒壊、又は崩壊する危険性が低い」と分類された。

調査の詳細について

1.建物の実態調査

建物の現状を把握するための外部仕上げの劣化調査及び内部の実態調査(コンクリート材料試験を含む)

2.建物の構造体の耐震性能を把握するための耐震診断

 

1-1.外壁劣化調査

高所作業者を用いて、外壁全面の目視調査、テストハンマーによる打音調査、実測を行い、外壁仕上げ材の浮き、ひび割れ、剥落、鉄筋露出等の位置・分布を調査し立面図に記録。

調査結果

外壁仕上げはモルタルの上に御影砕石(3~5mmの粒)洗い出し仕上げ。

建物各面でモルタルの浮き、ひび割れは多数確認できた。また建物南面、西面は鉄筋腐食によるコンクリートの剥落が多数生じている。

1-2.屋上重量物設置状況調査

屋上の受水槽や突起物の位置・大きさ・防水の状況等を調査した。

建築当初にはなかったと思われるもの(受水槽、モルタルを塗った突起物など)、パラペットのモルタルに広範囲に浮きが確認された。

屋上の平板の上に植物が生育し、根が平板下部に伸張し、平板に大きな不陸が生じている。雨の日の室内からの目視では、屋上付近からの雨の漏水は確認できなかった。

1-3.内部実態調査

目視調査、テストハンマーによる打音調査、実測等により、床・壁・梁・天井のひび割れ、仕上げ材の浮き、剥落、鉄筋の露出の位置・分布を確認し、平面図等に記録した。

調査結果

床、壁、天井の一部、特に窓やドアの回りにひび割れが、壁や天井に仕上げ材の浮きや膨れ、モルタル・漆喰の剥落が確認された。換気用あるいは配線用の外壁の穴から雨水が侵入し、モルタルの剥落が著しいところがあった。当初はなかったと思われる天井や床、間仕切り壁について、落ちていたり、抜けている部分があった。

柱の傾きについて

柱の傾きは高さ2mに対して最大で15mmでありほとんど施工誤差の範囲といえる。

1階の内部で柱と壁のコンクリートの一部をはつりとって鉄筋の径やコンクリートのかぶり厚さの測定や、中性化の深さを測定した。

はつり出し箇所

1階 柱・壁各1箇所

柱:主筋25mm丸鋼、帯筋9mm丸鋼、コンクリートかぶり厚さ16~20mm、中性化深度7~8mm

壁:縦筋・横筋9mm丸鋼、コンクリートかぶり厚さ縦筋28mm、横筋18mm、中性化深度5~11mm

コンクリートの圧縮強度・中性化試験

1・2階の壁から3箇所ずつコンクリートコアを抜き取り、圧縮強度と中性化の深度を測定した。

圧縮強度:1階平均22.6N/平方ミリメートル、2階平均20.3N/平方ミリメートル。

中性化深度:最小4.9mm、最大53.6mm

電磁波レーダーによる配筋調査

2.耐震診断

診断方法:(財)日本建築防災協会「改訂版 既存鉄筋コンクリート造建築物の耐震診断基準・同解説」に準拠し、「建築物の耐震診断システムマニュアル」を参考にする。

構造耐震指標(Is値)は、

構造耐震指標=保有性能基本指標×形状指標×経年指標

と構造耐震判定指標(Iso値)との比較で判断する。

Is値が、Iso値より大きい時(安全)

Is値が、Iso値より小さい時(耐震性に疑問あり)とする。

 

構造体新判断指標=耐震判断基本指標×地域指標×地盤指標×用途指標

 

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