ニュース<2008年>

千葉市長らに保存を求める要望書を提出-2008年9月5日

市庁舎内で提出準備中のスタッフ
市庁舎内で提出準備中のスタッフ

8月30日に開催された第3回イベント『検見川送信所、文化遺産宣言』では、「知る会」として千葉市長らに対し、独自の要望書を出す方針を明らかにし、満場の拍手にて要望書が採択されましたが、それを受けてさる9月5日に仲佐代表・高井副代表ら5名が千葉市役所を訪問し、千葉市長・千葉市教育長・千葉市議会議長の3者に宛てて要望書を提出しました。

今回の要望書提出の背景には、既報の通り今年春に検見川送信所が「DOCOMOMO Japan」の重要モダニズム建築に選定されたことや、さる7月に「日本建築家協会関東甲信越支部」が千葉市に対し、文化財指定の要望書を提出していること、さらには定例市議会が召集される直前ということから、要望書提出のタイミングとして最適ということがあります。

なお午後には市庁舎内の記者クラブにおいて、プレス関係者に対し、今回の要望書の内容や提出の経緯、「知る会」の活動を含めた最近の動きを説明しました。

この記者会見を受けて、翌9月6日付け「東京新聞」「千葉日報」では、さっそく要望書提出が報じられています。

要望書の内容<千葉市長宛>

一部、個人情報の部分を削除してありますのでご了承ください。

平成20年9月5日

千葉市長鶴岡啓一様

「検見川送信所を知る会」
代表・仲佐秀雄

検見川送信所跡の保存、利活用及び周辺整備に関する要望書

拝啓、時下ますますご清祥のこととお慶び申し上げます。

本会は昨年8月、検見川無線送信所跡(千葉県千葉市花見川区検見川町5-2069)の保存と利活用を図るため、その歴史的、建築学的な理解を深めるとともに、その価値を広く周知させることを目的に発足した市民団体です。同年10月27日には、建築専門家、送信所OBを招いてのイベントを市内で開催し、市民、専門家、市議らが多数参加し、新聞、テレビなどでも報じられました。また、今年2月23日、8月30日にも同様のイベントを開催しています。

千葉市が3月15日までに行った地域文化財の募集に際しては、同送信所の資料を提示し、5月には口頭にて同送信所の保存を要望しております。

千葉市が所有する旧検見川無線送信所局舎は日本の建築史的にも、産業史的にも貴重な建築物です。

設計は「東京中央郵便局」「大阪中央郵便局」などを手がけた大正・昭和前期を代表する逓信省営繕課の建築家・吉田鉄郎氏(1894年~1956年)。 1926年(大正15年)に竣工し、1930年(昭和5年)には日本初の国際放送を成し遂げました。千葉市は第2次大戦中に2度の大規模な空襲に遭い、大正期、昭和初期の建物がほとんど現存しておらず、鉄筋コンクリート造建築物としては市内最古級に属します。

本年3月には検見川町連合町内会が送信所跡地の保存、利活用に関する要望書を提出。6月には権威ある国際建築団体「ドコモモ・ジャパン」(代表・鈴木博之東京大学大学院教授)が重要モダニズム建築として選定し、さらに7月23日には社団法人日本建築家協会関東甲信越支部などが千葉市指定文化財にするよう要望書を提出しています。このような重要な建築物である検見川送信所が壊されるようなことがあれば、近代千葉の発展を伝える重要な遺産を失うことになります。

千葉市では長年、同建物の跡地を「検見川稲毛地区土地区画整理事業」の中で中学校用地として位置づけてきました。しかし、地域文化財の募集結果を報告された3月の市議会では教育長が「市民の方から登録の要望をいただいております旧検見川送信所跡地については歴史的な価値を再検証するとともに関係部局と協議してまいります」と発言されています。さらに、6月の市議会では児童の推計値を見ると、「現在のところ、学校建設の必要性はないと考える」との見解を示されました。本会としてはこれを事実上の局舎取り壊し撤回であり、局舎の保存への前進と受け取っております。千葉市に対し、この考えをさらに進め、建物及び跡地を保存・利活用するように要望いたします。

周辺住民からは生い茂る雑草やゴミの不法投棄などの現状の改善や防犯強化を願う声も上がっております。周辺地域を文化財にふさわしい整備を行い、住民の不安を一掃する施策に取り組んで頂きたく、重ねて要望いたします。

建物は現在、安全管理、治安上の理由から鉄扉にて閉鎖しておりますが、専門家による内部の文化財調査や耐久性に関する調査を速やかに行い、その結果を市民に明らかにすることもお願いします。

同建物の建築的価値については、2008年2月23日、本会主催のシンポジウムにて、建築史家・倉方俊輔氏が言及されていますので、以下、記します。

T字平面の建物は、見る視点で印象を変える。密集した都市ではできない正面階段などのデザイン処理や、水平方向にも垂直方向にも角を丸めたディテールなどが、それを後押しする。工場の美学を活用しながら、《建築》になっている。人間を主役に、鉄筋コンクリートならではの窓の広さを生かした東京中央郵便局・大阪中央郵便局が一方にあるとすれば、機械が主役のこれは鉄筋コンクリートの壁としての性格を引き出している。両極にありながら対になって、「デザインの求道者」吉田鉄郎の成果を明らかにする。

こんな建築は他にない。仮に外観だけを考えるとしても、残す価値は十分だ。視線によって変わる印象を味わいながらの散歩は楽しいに違いない。この新興住宅地に、ここにしかない個性と方向性が加わる。

繊細なプロポーション感覚に、工場美学が合わさったアートである。仮にパブリックアートを新たに発注したら、予算は一体いくらかかるのだろう? しかもこれは建築である。補修すれば中だって使える。そんな場所に、活用の知恵を待つ逸品が残っているとは、千葉市にとってこの上ない宝である。

もし求められれば、本会は同建物の保存・利活用に際して、協力を惜しまないことを申し添えます。

敬具

 

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